技能実習や特定技能を目指す人の家庭は?
面接していただく企業様や、視察に来られた方々からよく聞かれる質問のひとつが、ミャンマー人の年収はいくらぐらいか。今回は、それについて考えてみます。
結論から言えば、ミャンマー人の平均月収は2万7000円ぐらい、と推測します。以下で、この数値に至った背景を解説します。
ネット検索で出てくる数値は正しい?
統計調査をほとんど行わない、実施しても情報を公開しないミャンマーでは、正確な人口さえわかりません。しかし、平均収入をネット検索すると、「平均月収約159US$」という数字がよく出てきます。これは、2019年にJETROが行った調査結果をもとにした数字と推測できます。当時の「1US$=約1,400MMK」というレートで計算すると約22万MMK、日本円では2万2500円ほどでしょうか。
この調査以降、まともな年収調査が行われていない(または公表されていない)ため、多くのサイトがこのデータを引用し、さらには出典を確かめないサイトが孫引きするため、この数値が独り歩きしている状況です。引用数の多い数字がさも真実のように語られてしまう、AIの悪い側面が出ているのでは、という印象を個人的にはもっています。そこで、ミャンマー在住歴が10年を超える筆者が、少し考えてみます。
ミャンマーの最低賃金
一番参考になるのは、公表されているミャンマーの最低賃金ではないでしょうか。その推移を見ると、2019年は日額4,800MMKだったのが、2024年の段階で7,800MMK(月額で約20万MMK)となっています。約1.6倍です。これをJETROの2019年の調査結果から単純計算すると、2024年の平均月収は約35万MMKとなります。
しかし、2024年の為替である「1US$=約4,500MMK」を適用すると約80US$、日本円だと約1万1500円と信じがたい数字が出てきます。これは、ミャンマー、日本両国において、歴史的な通貨安があったためです。
そこで、周囲のミャンマー人に上記の数字を見せて平均年収の実感を尋ねたところ、「70万KKMくらい」という意見にもっと有力でした。現在の為替で175US$、日本円で約2万7000円です。弊社周辺にはオフィスワーカーが多いとしても、単純推測値35万MMKとの2倍もの差異は、どうして生まれたのでしょうか。
ミャンマーの消費者物価
ここで、ミャンマーの消費者物価指数(IMF調べ)に目を向けてみます。IMFの調査によると、2019年は114.73で2024年が261.26。この5年で約2.3倍になっています。これはひとえに、1US$が1400MMKから4500MMKになった、劇的ともいえるミャンマーの通貨安と、第一次産品以外のほとんどを輸入品に頼る国にもかかわらず、国境付近の紛争で近隣国からの輸入品がほとんど入らなくなった、または入るとしてもコストが爆上がりしたためです。第一次産品も、農薬や肥料は中国産が多いですから、影響を免れませんでした。
ズバリ! ミャンマー人の平均年収は…
この、消費者物価の「2.3倍」という数字は、ミャンマー人の実感での平均月収の増加率「2倍」ととても近い値です。そこで俄然、平均月収70万MMKという数字が、妥当に見えてきます。
技能実習生や特定技能を目指すミャンマー人の場合
さらに、実習生や特定技能で日本を目指す若者たちの家庭だけに着目してみます。実は、彼らの家庭の収入は平均値より上では、というのが、現地で送出事業に関わる者の実感です。
別の機会に理由を解説しますが、ミャンマーから日本に働きに行く若者は、他国を目指す若者よりも全般に教育程度が高いです。家庭環境も、タイやマレーシアを目指す若者よりも、少し豊かな層が多いと感じます。もちろん、難民施設から応募する人や、内戦で居住地を追われて家族全員無職、という家庭も珍しくありません。でも、高校進学率が30%ほど(2016年調査で少し古いですが)とされるミャンマーで、日本行きを希望する若者のほとんどが高校卒業か中退、大学に進学している人も多いことからも、ある程度の層であることがうかがえます。
また、日本を目指す場合、最低でも1年程度は子どもが働かずに勉強に打ち込める環境が必要です。出世払いとして親戚総出で支えてくれたとしても、家族にある程度の余裕が必要です。このため、実習生や特定技能生の家庭の収入は、平均よりも少し高いのではないでしょうか。
弊社への応募者の平均年収
弊社では、応募者全員に家庭の月収の聞き取りをしています。直近の20名の親の仕事と月収は以下でした。
運送業 2万6000円
建設業 2万円
農業 2万円
農業 3万3000円
農業 3万円
職人 2万6000円
介護職 2万7000円
建設業(タイ) 6万6000円
農業&商店経営 9万9000円
農業 2万円
商店経営 3万円
商店経営 2万円
農業 3万3000円
農業 2万円
農業 3万3000円
商店経営 8万円
商店経営 2万6000円
商店経営 6万7000円
農業 4万円
農業 1万3000円
平均3万6450円になります。なお、これを見ると、商店経営者に高収入が多いこともわかります。
結論
日本を目指す若者の家庭が、平均よりも高収入であり、留学を目指す家庭よりも低収入であると予測できることから、ミャンマー人全般の平均年収が2万7000円というのは、なかなか妥当な数字なのではないでしょうか。